
当楽曲は非常に物語性が強いので、情景想像しながら聴いて頂くのがベストでございます
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「なぁに、怖がることはありません、ちょっとした素敵な魔法を貴女にかけてあげましょう。それ、いち、にの、さん…」
魔女が合図をした瞬間、少女はもはや惨めな灰かぶりではなくなっていた
煌びやかな装飾で飾られた純白のドレスを身につけた公女がそこいた
「それ、もうひと押し…」
そして次の時には、絢爛豪華なティアラを身につけた王女が立っていた
「おまけに、お城までの馬車も用意しましょう
でもお気をつけなさい、この魔法は0時きっかりに解けてしまう儚いもの…
魔法が解け、世界が現実に戻るまでのこの短い時間、貴女様は一体どのような夢を見ましょうか?
……ふふ、それでは、良いひと時を」
プリンセスを乗せた馬車はお城を目指し、猛然と駆けて行く
外は雨が降り、風が吹き、雷鳴が轟く程の荒れ狂い様
しかし、現実から解放されたプリンセスには恐るるに足りない
ただただその想いは、憧れのお城の舞踏会だけでいっぱいとなっていた
この扉を開けた向こうには………
----あぁ、何て素敵なことでしょう
これは夢ではないのかしら
こんなにも晴れ晴れとした気分は初めてだわ
身体がうずうずと動いてしまう
勝手に脚がステップを踏んでしまう
顔が綻んでだらしがないわ
あぁ、夢でも構わない
でも、どうかお願い、もう少しだけ私にこの夢を見させて下さい----
扉を開けたそこには、想い描いていた以上の世界が広がっていた
壮麗たるダンスホールで、華々しく輝く人々が流麗に舞い踊っている
この世のありとあらゆる“美”が集結し、ただこの時、この一点のみに集約されているかのようだ
そんな燦爛たる空間で、一際眩く光を放つ人物が目に入った
彼の御方がこのお城の王子様
何と凛々しい立居振舞、何と麗しい容姿でありましょう
王女と王子、双方がお互いを視界に留めたその時、世界は二人だけのモノとなった
二人の世界の外の色彩は失われ、見えるのは相手の姿のみ
外界から掛かる舞踏の誘いはミュートされた
お互い初めて会うはずなのに、どうしてこんなにも惹かれるのだろう
二人はどちらからということもなく、自然と歩み引き寄せられた
近づくにつれて歩みは速まっていく
<会いたい、逢いたい、今すぐ一緒に踊り、触れ合いたい>
そして………
----あぁ、なんて素敵なことでしょう
これはまるで御伽の話
こんなにも夢心地な気分は初めてだわ
熱くたぎる血液が全身を巡る
胸の高鳴りが身体を奮わす
心が貴方を求めて仕方がないわ
あぁ、至福の夢
叶うものならば、もう少しだけこの夢よ続いて----
しかし、目覚めの刻限が迫っていた
王女は少女へ、純白のドレスは灰色のエプロンへ、元に戻らねばならない
もう夢は終わりなのである
----あぁ、王子様、私と貴方様では住む世界が違うのです
今宵が最初で最後、もうこうして貴方様と触れ合うことも出来ないでしょう
でも、どうか、どうかお願いです、この現と夢が交差した今宵の出来事は忘れないで下さい
夢であって夢でない、こんな絵空事を、せめて貴方様と心を介して共有出来たなら…私は幸せです----
0時を知らせる鐘がなり、徐々に魔法が解けていきながら、少女は足早に城を立ち去った
「…貴女の想い、聞き届けましたよ」
去った後には、少女の想いが込められたガラスの靴が残されるのみであった