フローディングワールド

 

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陰鬱な昼下がり

 

起きて部屋を見渡せば、今日も井戸の底を思わせる暗さ

でかでかと置かれた水槽の中を、観賞魚が不気味な陰を落として揺らめいている

 

今日も、か

 

ここ最近、ずっと雨が降りしきっている

日に日に窓を打つ雨の音は強くなるばかし

記録的な降雨量で、街のあちこちで被害も出ているらしい

 

こんだけ雨続きだと、僕もいい加減参ってしまう

雨音はノイズとなって僕の安泰を妨害するし

靄掛かった水しぶきのフィルターは毎日見える大霊峰をも遮断するし

愉しみにしていたキャンプだってお預け

 

それと、向かいの花屋の娘さんが先日亡くなったらしい

可哀相に、まだあんなに若かったのに

こんな憂鬱な空模様の中で逝かれたとなると、安らかに成仏だって出来まい

 

厭な空気はどこまでも伝播し、そして人を蝕む

 

全く晴れ晴れとしない

このままでは僕の心までふやけ、蝕まれ、無くなってしまいそうだ

 

どうにかして明るくなりたいが、こんな中ではどうにも気が乗らない

 

 

…こんな現実、嫌なら逃避でもしてしまうか

 

 

そんなことを思った僕は、再びベッドに潜って意識を遠退けた

 

 

 

雨音が止んだ

 

 

 

 

途端、水槽が引っ繰り返って落ちる音がした

 

 

 

 

 

揺蕩う感覚に身を任せ、僕は涙で溺れた