旧億の園

 

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サーーー…………………

 

 

灰色の景色に、止まぬ雨が降り続ける

 

 

雄大な山々を望む小高い丘からは村が見渡せる

 

自然に囲まれたこの小さな場所でも、人々は鮮やかに生き、彩りのある生命力に溢れた日々を送っていた

 

 

だが辺りを見渡しても、今や生の気力を感じることは出来ない

 

 

それもそのはずだ

 

此処は当時の姿そのままに死んだ

 

 

 

色彩が失われてどれ程経つであろう?

枯れぬ涙でどれ程の哀が満ちたであろう?

 

 

仕方ない

 

世界から隔絶されようとも、此処が彼女の記憶であり続けるのに変わりはないのだから

 

 

 

村の裏手、少し外れたところを歩くと、森へと続く道が見えてきた

 

 

 

時が止まっているわけではない

 

あの時から誰も居なくなって人の手が加えられなくなれば、此処だって時間の流れと共に朽ちていく

 

あらゆる物は自然へ還り行く運命だ

 

 

 

しかし、この道は、まるで今なお使われ続けている人道かのように見える

 

傍の草木は整えられ、頭上の木々はアーチ状のトンネルすら形成している

 

この道だけではない、此処、この村全体も、明らかな外力を以てして未だ保存されているようだ

 

 

自然法則に反する、異様で独特な空気が此処には流れている

 

 

 

まあ、不思議なことではないのだが

 

 

 

 

ザッザッザッザッ………………

 

 

 

道なりに従って歩んでいく

 

 

 

ぽつん、ぽつん………

 

 

 

次第に雨が弱まってきた

 

 

 

 

そして、明るさを伴った闇に包まれ始めた

 

 

 

見上げれば、木々の間から星々が輝いている

 

 

 

 

 

ブワッ―――――――

 

 

 

 

 

にわかに突風が吹き抜け、視界が光で埋め尽くされた

 

 

 

瞬間、眼前見渡す限りの花園が広がっていた

 

 

 

種々雑多な花々が咲き香り、どこまでも豊かな色彩を織りなす

 

 

見事なものだ

 

 

 

 

中央に目を見やると、石碑のような物が立っていた

 

 

 

アイビーに抱かれた其れには、蔦が邪魔で一部見えないが文字が刻まれている

 

『天の雫を以て千代に咲き誇る華 *****』

 

 

 

 

 

「華なんて、ちょっと大それ過ぎだわ」

 

 

 

 

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優しげに揺れるネリネの花に見送られなが、私は次の地へと足を向けた